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石巻NPO日和バックナンバー Vol.014

2020年、最大被災地・石巻が輝くためには? 

現在の石巻圏の活況は復興事業の特需で支えられていて、「その後」については悲観的な見方をする方が多いように感じます。同じように、石巻市の財政も国からの復興交付金で大幅に膨らんでおり、その予算執行と短期間での事業実施ため、職員数を大幅に増やしている事が不安材料になっているのかもしれません。

今回は、行政、民間の双方からキーパーソンをお招きし、市の復興基本計画の最終年度となる2020年以降、石巻市が全国に誇れる復興モデルとなるには何が必要か、をお聞きします。

先ずは石巻市 復興担当審議監の佐藤 茂宗さんをご紹介いたします。先日の「第5回NPO連絡会議」では、市とNPOとの協働についての講話を頂きました。審議監は総務省から出向されているそうですね。

石巻市復興担当審議監 佐藤茂宗さん

佐藤:昨年の6月から石巻市役所内に机を置かせて頂いています。こちらに来て、ちょうど一年になりますね。震災前より良いまちをつくる「創造的復興」を成し遂げるため、市長のバックアップやマンパワー不足の解消等を担っています。総務省から内閣府に出向した際は、改正NPO法(注2)の運用とNPOをより設立しやすくするための改正にも関わりました。

木村 美保子さんは、イオンモール石巻などで複数の飲食店を経営されているビジネスウーマンです。同時に、いしのまきNPOセンターの副代表を務めるなど、市民活動にも熱心ですね。

(株)ゼンインターナショナル代表取締役 (特非)いしのまきNPOセンター副代表理事 木村美保子さん

木村:NPOに関心を持ったのは石巻青年会議所(JC)に所属していた頃で、全国的にもNPO活動を通じて市民参加型社会を実現しようという機運が生まれてきた頃でした。佐藤審議監は改正NPO法に関わったとのお話しでしたが、私の時代はそこから13年程遡って、平成10年、議員立法として最初のNPO法(注1)が制定、施行された頃です。あ、年齢がバレますよね(笑)

 

審議監、石巻市役所に身を置くことで見えてきた課題についてお聞かせください。

佐藤:市の現状をお話ししますと、東日本大震災以降の復旧、復興事業のため、人やお金を平常時には考えられない規模で投入しています。今年度の一般会計予算1,891億円の7割近くが復興関連です。職員数は同規模の自治体と比較すると1.6倍の人員数なのですが、それでも職員の皆さんは業務で忙殺され、残業も非常に多く、疲弊した状態が続いています。
この状態のままでは、復興事業に一区切りがつく2020年度以降、つまり「平常時」に戻ったとき、様々な弊害が起こります。

先日の講話では、「平常時へのソフトランディング」が課題になると指摘されましたよね。

佐藤:如何に人やお金を平常時の適正な規模に落ち着かせるかが重要です。市役所の業務を抜本的に効率化する必要があり、そのためには公共施設の指定管理など、NPO等への業務委託や民営化導入を徹底して進めていく・・そのような業務改革を行う事で、市職員の力を創造的復興や地方創生、また、先日の連絡会議のテーマである「行政とNPOの協働の推進」のためにシフトさせたいですね。

協働のパートナーとしてのNPOの魅力は何でしょう?

佐藤:一つは、特定の分野について専門性があり、自らの責任でスピーディーに課題解決に取り組める点です。行政は議会承認が必要であるとか、何かと意思決定に時間がかかる。NPOと行政が協働することにより、行政が単独で事業を行う以上の成果を得られると考えます。
もう一つは、NPOはボランティアの参加や寄付などを通じ、広く市民を巻き込んで活動しており、市民が力を合わせて課題を解決することが可能です。NPO活動に参加や支援をする市民にとっては、地域の課題がより身近なものとなり、当事者意識や共助の意識が高まる。それが地域力、市民力を底上げするものだと思います。

木村さん、NPO側の立場としては、今のお話をどのように感じましたか?

木村:NPO側もその期待に応えられるよう、各々の団体、スタッフが常にスキルアップを図り、法令遵守を徹底して、行政や市民から信頼を得る努力が必要ですよね。
行政との協働については、合併する前の石巻では割と出来ていたと思います。何より、職員の方との距離が近く、顔の見える関係づくりが出来ていたし、協働を推進するための中長期計画も作られました。その後、広域合併と震災が起きて・・審議監のおっしゃる通り、今は職員の皆さんがすごく忙しそうで、近寄り難い雰囲気ですよね。

6月1日に開催された「第5回石巻市NPO連絡会議」では、佐藤審議監がNPO団体と市職員に向けて基調講演を行いました

佐藤:持論として、市職員の皆さんにはもっと外に出てもらって、地域のコンサルティング機能を果たしてほしいと思っています。住民自治を実現するため、当事者となる住民の相談役となりバックアップしてほしい。また、市職員自らがNPOを立ち上げたり、ソーシャルビジネスを興すのもいい。これからは中長期的な観点で市役所を運営していく経営感覚が必要なので、NPO等民間から学ぶことは多いと思います。

木村:若手職員の研修の一環として、NPO団体のスタッフをやってみるのもいいと思いますよ。何より、地域課題がはっきり見えてくるし、民間と交流することで、新しいアイディアが出てくるかもしれない。今は忙しそうなので難しいとは思いますが、ぜひ実現してほしい。

また、町内会や自治会の会長職って、市役所OBの方が担っているケースが多いですよね。事務処理能力が高かったり、行政との関係性が担保できたりといった理由だと思いますが、このようなOBの方がNPOのスタッフとしても活躍してくれれば、すごくいいと考えています。「協働の推進」のためには、最も適した人材だと思いますよ。

木村さんは企業経営者でもあるので、復興事業終了後の雇用や人材確保については、危機感を持っているのでは?

木村:最近、特に気になるのが、各中学校の成績上位の生徒が仙台の高校に進学するケースが増えていることです。地元を愛する気持ちの醸成って、高校生くらいからでしょう? 中学卒業と同時に石巻を出て、仙台の高校や東京の大学に進んだら、「地元愛」無いまま大都市圏で就職しますよね。となると、石巻に戻る理由がない。優秀な人材の確保がまずます難しくなっていくような気がします。

佐藤:でも、最近の若い世代は、大企業で仕事に追われ時間に余裕のない生活をするより、多少収入が低くても、地方で楽しく自分の時間を大切に暮らしたいという人も多いのでは? そのような価値観を持つ方を、石巻に引き付けたいですよね。そういう意味で、今回の連絡会議での市とNPOが協働し実施している移住・定住促進の事業の報告は、興味を持って聞かせていただきました。

木村:石巻って被災して様々な問題が顕在化した分、ソーシャルビジネスを興すには適した場所なのかもしれませんね。

佐藤:そこをもっと若い世代にPRすべきですよね。「石巻と言えば、チャレンジしやすいまち」とか。市の政策も「あれもこれも」では人とお金に限界がありますし、PR効果も薄れていくので、例えば、若者の起業支援や子育て支援に絞るなどの「あれかこれか」の選択と集中が必要ですね。

木村:それにしても、今のうちに、若い世代が活躍できる場や仕事を作る必要があるますよね。そのためにも官民が連携することが必要ですね。行政側とNPOや地元企業など民間側が非公式に集まって、このような問題を気軽に話しあえる場があるといいですよね。飲み会なら、なお良しです(笑)

佐藤:同感です(笑)顔の見える関係性づくりが大切ですからね。

2020年、石巻市では官民の協働が進んだことで、素晴らしい復興が成し遂げられました・・・と、この新聞に大きく書きたいですね!

お二方とも大変お忙しい中、ご出席ありがとうございました!

 

※1 特定非営利活動促進法(NPO法)

平成10年3月制定、同年12月施行。市民が行う社会貢献活動を推進するため、特定された17種の公益活動(まちづくりや環境保全など・現在は20種)を行う非営利団体が法人格を取得できるようにした。法人になることにより、団体は契約行為(団体名義での賃貸契約や口座の開設)が可能になった。

※2 改正特定非営利活動推進法(改正NPO法)
東日本大震災直後の2011年6月に、NPO法が大幅に改正、翌年4月に施行された。認証・認定期間が各都道府県・政令市の所轄庁に移管され、仮認定(認定NPO法人への移行期間)も制度化された。