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石巻NPO日和バックナンバー Vol.024

「移動」を支えることは、地域を支えること?!

東日本大震災の被災地では、津波により多くの方が「移動」手段である車を失いました。給水所から水を運ぶのに自転車しかなく、大変な思いをした方も多いのでは…。あらためて、車の有り難さを実感した時期だったと思います。

今回お話しを伺った二つの団体は、震災直後から車を失った被災者の移動の支援を行ってきましたが、今やその活動は高齢者、困窮者の見守りやコミュニティの形成まで支えるようになりました。
高齢者による交通事故や免許返納についての報道、車への依存度が高い生活を送る我々には「移動」が将来の大きな心配事になってきましたが、この二団体の活動から解決のヒントを頂けるかもしれません。

本日は、NPO法人 移動支援Reraの村島 弘子代表と、一般社団法人 日本カーシェアリング協会の吉澤 武彦代表にお越しいただきました。先ずは、それぞれの団体の活動を教えてください。

左・一般社団法人日本カーシェアリング協会 吉澤武彦代表理事 右・特定非営利活動法人移動支援Rera 村島弘子代表

村島:石巻地域で、移動の手段がない方々の送迎支援を行っている団体です。震災直後、北海道からのボランティアチームの一員として石巻に入り、津波により車を流され移動手段を失った人の送迎支援に関わるようになりました。現在は福祉車両と乗用車合わせて8台を使って、移動困難者の送迎を行っています。

吉澤:地域の人が運営するカーシェアリングや、生活困窮で車を持てない方に車を貸し出す活動を行っています。石巻では津波被害で約6万台の車が失われ、「移動」が深刻な問題になっていました。そこで、寄付で車を募り、共同で使ってもらうカーシェアをスタートさせました。カーシェアを通じて、地域の方やコミュニティに役立つことをいろいろ考えて実践しています。

お二人とも県外から支援者として石巻にいらっしゃったんですよね。活動のきっかけを教えてください。

吉澤:私は関西出身で、阪神淡路大震災の支援活動をされた山田バウさん(元 神戸元気村代表)から、2011年4月に「被災地でのカーシェアリングをやってみないか?」と声を掛けられたことがきっかけでした。
自分も現場に入っていて、多くの被災者の方が車を失って困っている状況が分かっていたので、仮設住宅で車をシェアするのはとてもいいアイディアだと思い、引き受けたところが始まりです。「日本カーシェアリング協会」という団体名ですが、東京や大阪に本部がある訳ではなく、私が一人で車集めから始めた草の根活動なんです。

石巻の団体なのに「日本」、お一人だけの団体なのに「協会」だったんですね!

吉澤:(笑)そうなんです。はじめは自転車で大阪の町を一人で回り、作成した企画書を持って「被災地支援として車を提供してください」と約50の企業を回りました。最初は断られ続けたのですが、やっと車を一台提供してくれる方に出会い、同年7月に初めて石巻に車を届けることができました。一台目を導入した時にテレビや新聞が取り上げてくれて、それを見た方が寄付してくれるようになり、少しずつ集まり始めました。現在は95台の車両があり、主に仮設住宅や災害公営住宅に置かれています。
最初は被災者を対象としたシェアリングだけだったのですが、現場で要望があれば出来るだけ柔軟にお手伝いできるよう、車を貸せるルールをその都度修正しながらやってきました。生活に困っている方、ボランティアで車を必要としているなど、現場の声を聞きながら一つ一つ変えてきました。

村島:私は札幌出身なので「札幌から被災地支援に行っているNPOがある」という情報を聞き、個人ボランティアとして手伝いをするために参加しました。札幌で障がい者支援を行っていたNPO法人だったので、福祉車輌を石巻に持込み「災害移動支援ボランティアRera」と名前を変え、津波により車を流され移動手段を失った人や、車いすや寝たきりの方の送迎支援を始めたんです。
震災直後はみんなが移動に困っていたので、若い方からお年寄りまで様々な年代の方の送迎を行っていたのですが、徐々に自力で車を買える人は支援を必要としなくなり、震災前からずっと移動に困っていたという方や、免許を返納した高齢の方、心身に障害のある方などが送迎を必要とするようになりました。震災前から石巻にあった問題が、被災をきっかけに表面化したんですね。
現在の主な利用者は80代以上が半数を占めており、利用される方のほとんどは障がいや病気をもたれている方や高齢者がほとんどで、震災前からの移動困難者の方々です。

移動困難者に対する送迎支援は、見守り活動に繋がる場合も多いと聞きました。

村島:そうですね。移動手段がない方は送迎してくれる家族がいない場合が多いので、送迎しながら「今日はいつもと様子が違った」「最近忘れっぽくなった」などの異変があるとスタッフで共有し、状況によっては福祉関係に繋いだりもするようになりました。
移動手段がなく困っている方が抱えている問題は複合的であり、生活の中にたくさんの困りごとが絡まっていて、移動手段だけあっても解決しない事が多いのです。
同居している家族に暴力を振るわれているという話を車の中で聞いたり、無年金などの制度上の隙間にいる方だったり、移動支援を通じて利用者の困りごとが次々に見えてくることがあります。

吉澤:カーシェアの活動も同じように、見守りの要素がありますね。私たちの場合は、地域の人がその地域の困難者の送り迎えを担う、いわば共助の形なので、近所の中で自然と見守っている形になっています。車の利用者と連絡がとれず、家に行ったらうずくまっていたという事もあり、救急車も今までに3回呼んだことがあります。車を通じた地域コミュニティによるネットワークができたことで、それが見守りに繋がっています。

村島:車は生活のとても大切な手段です。その人の生活の、本当に困っている部分に届くから、見守りや地域のことに繋げていけると思っています。

吉澤:「お茶っこしましょう」よりも「お出かけしましょう」の方が、みなさんのモチベーションが上がるんですよ。最近は特に困っているから使うというよりも、サークル活動として買い物やお出かけのために使っていることが多いです。最近も複数のサークルが、車でお花見に行っていました。何よりも「楽しい」と

思えることを大事にしています。そのほうがみんな出てきやすいのもありますし、毎週買い物に行く曜日や、お出かけする予定をみんなで決めてもらって、それを楽しみにして、たくさんの方が参加しています。マイカーを持っていて移動に困っていない人も、「みんなで行くと楽しいから」と参加することもあります。

楽しいいことをして、気が付いたら移動の問題も解決されている、というのを目指してやっています。

タイヤ交換など、車のメンテナンスって、お金かかりますよね?

吉澤:各メーカーさんから協賛を頂いています。タイヤ交換については、石巻専修大学の学生さんが授業の一環として、全部の車をやってくれます。このように、皆さんに支えて頂くことでコストを削減しているので、安く車を貸すことができるんです。本当にありがたいですね。

村島:私たちもカーシェアさんから紹介して頂き、専修大の学生さんたちにタイヤ交換をしてもらっていますよ。

利用されている方から声を聞く機会はありますか?

村島:利用者の方はもったいないくらい感謝してくれます。「神様だ」と手を合わせられることもあります(笑)。スタッフにとっても、「自分がこんなに人を喜ばせることができるんだ」と思えることは本当に力になりますよね。石巻の交通事業者さんも私たちの活動を理解してくれて、「あんたたちは地域の交通弱者への支援をしてくれている」と言って頂けたときは嬉しかったですね。

私たちの送迎先の9割は病院ですが、利用者の方にとっては外出する目的があることで生活の質が上がるし、自分には外出する手段があると思えるだけで前向きになれるんだ、と感じています。  

吉澤:最近、改めて利用されている方に聞いて回っているのですが、みなさん本当に喜んで満足頂いていています。引きこもっていた方も、カーシェアを利用することで友達に会いに行けたとか、生活の質が変わったとか、そういう姿を見るのが自分たちにとってのやりがいになり、元気をもらっています。

最後に、今後の活動について教えてください。

吉澤:これまでの活動は、仮設住宅や復興住宅の住民の方が対象だったのですが、高齢化に伴う孤立の問題、コミュニティの崩壊などは、被災地のみならず全国的な課題になっています。私達が被災者支援として始めたカーシェアリングの活動は、それらの課題を解決するための役割があると思っています。被災地・石巻で多くの支援を受けながら作ってきた仕組みを、今度は他の地域に還元し役立たせていきたいと思っています。

村島:「ミニRera」のようなものが石巻に増えればいいなと思っています。移動で困っている方は私たちが受入れきれないくらい沢山いるので、Reraだけでは十分ではないんです。Reraの活動を参考にして、身近にいる移動困難者を支えようという人たちが増えていけばいいなと思います。そのために、送迎講習会を毎年開いたりもしていますよ。

石巻地域だけでなく、急激な人口減と高齢化に伴い「移動困難者」の課題を抱える地方の市町にとって、お二人が始めた「石巻発」の活動は、強力な解決策になるのではないでしょうか?今日はありがとうございました!